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スピードウエイというのは戦後のイギリスで生まれたバイクレースの一種である。 その時代には賭け事のための馬や犬のレースはもうなかった。そこで目先の聞くイギリス人は揚水のために使われていた古いエンジンを粗い骨組みで包み、軽い車輪を2つ付け、ブレーキのない独特で華奢なバイクを生み出した。競馬のルールを適用し、左回りのみと決め、このバイクのレースを競馬所で行うようになった。 このレースはとても派手で、レース4週をほとんどドリフトしながら、敵と格闘して走らなければならない。1分とちょっとでレースは終わり、次のレースはすぐに始まる。観客は近くから観賞でき、賭け事もできる。 時代は変わってもバイクの作りはほとんど変わらず、今のバイクも昔の物ととても似ており、好奇心を湧かせる。刺激も変わらず、質素だが性能のいいエンジンで、燃料に使われているアルコールのにおいが回りに漂う。 実際、この描写はこの種目の大きい魅力を伝えきることはできないが、普段見慣れているバイクのイメージとは似ても似つかないのでこのバイクを一目見見るだけで魅了される。エキストリームでファッション界からかけ離れた世界。

フラットトラックとはスピードウエイと同じように左回りだけのオートバイレースの一種で、未舗装の楕円形のトラックの上で行われる。バイクのタイヤはスピードウエイ用のタイヤより太く、見慣れてるバイクタイヤに近い。後ろにしかブレーキはなく、外見は魅力的だ。 このスポーツはイギリスで大人気を誇る。 70年代にアメリカでは音楽、映画、演劇、美術と芸術の業界を引き付けて止まなかった。 そして三年前からファッション業界までもがそこからインスピレーションを得た。

場所はPitti Uomoの1月の展示会でALBERTO FASCIANI (アルベルト ファッシャー二)に提供された一室。

４～７台のオートバイの小規模展示会。 2～3人の世界的カスタマイザーととても質素だが全く飽きない格好いいバイク。 そのバイクは専門誌で取り上げられ、最近はファッション界にまで必要とされている。 趣味とスタイルのいい芸術作品、ようやく専門イベント以外でも観賞できるようになり、話題になり始めている。 カスタマイザーたちはオートバイのスタイリストだけではない、それ以上のものである。そのうち一人はTriumphのスタイリストとして勤めており、今年からDucatiの新しいスタイル作りにも携わっている。 カスタマイザーたちは見た目もよく、ファッション業界の人々にも引けを取らない。 包括的なキャラクターでなければ、このようなものを生み出せなかった。 何が好まれるか、なにが好まれないか、その理由など、一般的な趣向についての市場調査にも慣れている。 例えばスタイルの様々なオブジェ（皮革部分、鞄、タンクの一本線、など）を赤い糸のように繋いでいくファシャニ・アルベルト(Alberto Fasciani)の提案。 エンジンと骨組みだけのスピードウエイ用オートバイ。妥協しないレース用サラブレッド。 不条理で凶暴なバイク。 芸術作品のようなブレーキなし、エンジンと骨組みのパイプだけのバイク。子供が描かれたようなバイクだが同時に危険で質素でもある。 呼び覚ますイメージで皆を魅了する。あまり見かけないが、話には聞いたことがある。 このバイクをひとまず中古で手に入れ、解体し、細かいところまで磨き上げ、また組み立てた。 その時の手作業は素朴な写真を通して語られている。色はただ骨組みとエンジンの金属の色とタイヤの黒だけだ。 たったそれだけ。スピードウエイのバイクを包むのに普段使われているビニールやプラスチックなどの布地の代わりにファシャニ・アルベルト(Alberto Fasciani)は魅力的で匂いを放つ薄い皮革を使う。 ぴったり、タイトに包み、後ろの部分とハンドルカバーはグリップ付きでもいい。 このバイクは生まれたばかりだが最終的なアイデアの具現化だ。 最も純粋な靴とバイクで、質素でありながら的確な表現を持つ。 赤い土で覆われた床に弱い照明。微かな光で照らされた靴、アクセサリー、バイクと写真。面白い雰囲気だが、重くない。 アルコールの香りが漂う。どこから来ているのだろうか。

その隣にはもう一台ある。上のバイクほど質素ではなく、やや丸々としていてもっと人間にあったバイク。ライトと仮のナンバープレートも付いており、そのバイクを使って出かけても違和感はない。 スピードウエイより柔らかい世界だが、たくさんの刺激があり、スピードウエイと同等な魅力を感じさせる。 ここ数十年でハーレー(Harley)は絶大な人気のバイクであり、最も有名なフラットトラックレースに出場している。そのファンがフラットトラックという人気と同時に独占的な種目の選手の格好をして毎日レプリカに乗っている。 私達はそんな比類のないバイクはそこにある。ゼロから構想し、創った。骨組みのデザインを考え、組み立て、サドルとタンクに色をつけ、最後に皮のかばんとタンクにトレードマークを加えた。呼び起こされる夢は現実味を帯びていて、自分がそんなバイクに乗っていることを想像できる。そのバイクでピアチェンツァの山道を走っていることが簡単に想像できる。企画の雰囲気は柔らかくてセクシーで、床に置いてあるファシャニの靴を履き、毎日バイクに乗る男性を対象とする。手帳と財布は革鞄に入れられる。 その周りにはほとんど一色の大きい静物写真。芸術的なカットで撮影された靴の2メートルぐらいの写真もある。大きい写真に額縁はシンプルで黒い。ただそれだけである。

その内の数枚は靴の最終的企画にたどり着くための行程を明確に表している。そのおかげで見学者は美しさ、素朴さ、綺麗さ、厳格さのような必要不可欠な様相を理解できる。 数枚のスケッチは拡大され2x1の大きい額縁に入れられ偉人を真似たシンプルなスケッチ。ミケランジェロは一般の彫刻家が使っていたのと同じようなノミを利用していた。ティツィアノもしっくい職人が使っていたのと同じ筆と色土を使っていた。 あちらこちらには仕事中のカスタマイザーたちの写真が飾られている。その写真からカスタマイザーたちの繊細さと、世論に逆らっても自分の決断を貫いて職業を芸術作品に変える勇気を感じ取れる。 順応しない靴とバイク。 それらはどこかへ行くためや動くための物ではなく、自分を語るためにある。 自分は実際どんな人間であるかよりどんな人間性にあこがれているかを伝えるための道具である。 高級素材や過剰な装飾で贅沢を感じるのではなく、無駄なぐらいのスペースのなかで美しさを探しだすことで贅沢さを感じる。 バイクと同じように靴も歩き方や移動の方法にだけ影響を与えるのではなく、人生そのものにまで影響を及ぼす。